· 

地球の系譜と生き物の関係

動物は生き物の歴史を宿していると思う。

 

例えば、草食動物は体内に植物セルロースを分解する微生物を数多く、それこそその種独自の体細胞数よりも多く持っている。

その微生物は酸素がない環境でも生きていける嫌気性の種がたくさんある。嫌気性の生き物は、この地球上にまだ酸素がなかった25億年以上前から生きている。

酸素という物質は化学反応性の高い物質であるがゆえに、それを利用できない生物には害をもたらす(もちろん、今でも活性酸素、という言葉があるし、錆が発生するのも酸素の仕業であるから、無害とは言えない)。

そんな昔からいる生物が、酸素が含まれる大気に覆われている地球上で、酸素のない環境の一つである動物の体内に棲んでいるというのは、考えてみるととても深淵だ。

今生きている動物は、その動物独自の細胞だけでは実は生きていくことができない。

草食動物から植物を分解できる微生物を全部除いたら、草食動物は草を食べて生きていくことができなくなるし、人間だって体内に棲む微生物を全部除いたらエネルギー生産のシステムが壊れて生きていけない。

 

ぼくら動物は今を生きているけれど、そんなぼくらの中には太古の昔から生きている生き物がいる。

動物というのはそれぞれ独自の生き物ではあるけれど、この地球の系譜を受け取って、この世界の脈々とした流れの中にいるからだ。

 

この世界に生きるものは、これまでの歴史を体内に含めて生きている。

そんなことを考えた。

 

参考:

 

『ミクロの森』D. G. ハスケル著、三木直子訳